和三盆って言葉の響き好き

ここは東京砂漠

あほんだら

初恋はお寺の息子だった、確か次男。

「魑魅魍魎」ほどに迫力のある仏教的文字列の名前だった。四字熟語として名前を覚えてる。

バレンタインの日チョコを渡しに行った思い出しかない、なぜ好きになったのか思い出せない。きっと顔。

初めてテレビでかまいたち濱家を見た時、記憶の中のこの子と結びつきすぎて、ドッペルゲンガーは真実だとを確信できた。

でもその時から、「(お寺の息子)くんはきっと〇〇ちゃんのことが好きなんだろうな…」と根拠もなくネガティブな性格だった。

この前その子のお寺の名前を調べたら、ホームページが出てきた。ちらっと見えた顔を見て、何十年前の人物でもしっかり覚えてるもんだな、と思った。将来僧になって結婚してほしい、否現在僧だった。

 

中学校で好きな人はできなかった。

ちらほらいいなって思う子はいたんだろうけど、全員名前も顔も覚えていないんだから、まともではない、違う。

 

高校生の時、初めて彼氏ができた。

高二で同じクラスになって、同じ部活だから、と何かと一緒にいることが多くなった。

それでも付き合ってなかったから、この関係はおかしいって言われた時、「別に2人がいいならいいんじゃない?」って私が言ったら、その人は拍子抜けしたように、「そっか!」と言っていた。

何も考えていない、2人がいいならいいんじゃない、責任を負ったふりした無責任だな。でも特出した恋愛経験のない私が、2人でいる時間を空間として、その居心地が悪くないなら無理に離れなくてもいい、って意識を持ってたのは、まあかなり美化した言い方だけど、我ながら愛おしいが。川上未映子のエッセイの中に確かこれに似たものがあったな。

 

その彼氏とは遠距離になって半年くらいで別れた。その人の浮気という病気が治らず、自分が大好きなその人に疲れたし、わざわざ高いお金使って会いに行く価値がなくなった、って本気で思った時に、終わりが身に染みた。そのじわじわ悲しい感覚はなんとなく覚えてる。

 

そのあとは男遊びも、というか女子校だったし、男絡みが何もなかった。たまに仲良い友達と遊ぶけど、恋沙汰は友達の話で十分だった。

 

専門三年生の時、共通の友達を通じて知り合った人がいた。私は単純に、共通の友達が多いことの喜びで仲良くなりたかった。彼氏にはならないだろうと思った、だって顔が不細工だから。でも2人で遊びに行った、確か最初はラーメンを食べた。向こうが私の地元まで車で迎えにきてくれた気がする。

何か会話の繋がりで私が、「鉄骨を見るのが好き」と言った。確かにそれは事実で、工場地帯を見たり無骨なフェンスとか入り組んだ複雑な鉄骨を見るのが好きだった。

そうしたらその人は、車で行くにはかなり離れた場所にある工場地帯まで何も言わずに連れて行ってくれた。それがめちゃくちゃ嬉しかった。きっとその時から、私はその人に惹かれてた気がする。

共通の友達が多いから、周りに囃され、脳内お花畑の私は、「こりゃ付き合う流れだぞ」と昂ってた。

何回か付き合う、付き合わないと話をしたことがある。ただ私は就職で東京へ行くから、遠距離になることは確定だった。お互い遠距離恋愛での失敗歴があったから、遠距離はきついね、と踏みとどまっていた。

 

3月の頭から露骨にLINEの返信が遅くなった。

それに気付いた瞬間、もう向こうが私に会う気がないな、と勘付いた。

本心を確認したくて電話をしたいと言ったけど、時間が作れないと何度か断られた。じゃあいつできる?って聞いたら、明日の夜って言うから、その時電話をかけた。電話に出た背景は駅のホームだと分かった。

「もう私に会う気ないでしょ?」と聞いた。

「うん」と言われた、いや迷いないな、なんなら、でしょ?に被せられたくらい即答じゃないか、焦った。でもキョドったら焦ってるとバレる,それは癪に障るから平静を装って、「理由はあるの?」と聞いた。

 

「実は(私)さんに出会う前から、知り合ってた女の人がいて。その人と付き合ってた。」

 

耳を疑った、待って私遊ばれてたの?こんなブスに?めちゃくちゃ私的に妥協したよ?え、待って一回落ち着こう、いやどう考えてもおかしい、だってお前の顔は相当不細工で、私はかなり妥協した、意外と私は人を性格で好きになれる人なんだな、と思ったんだけど、えまじで?ああ、こんな性格だから振られるのか!とも思ったけど、そんなことよりも、電話越しにいる人情のかけらもないモンスターは誰だ?と気持ちが悪くなった。

だって、彼女がいたんだよ。

私が欲しいと呟いた物は、次会う時に買って私にくれた。というか共通の友達から、あいつに好かれてどうなの?とまで言われてた。共通の友達の多さから、最初から疑えていなかったな。

 

はあ。

 

たいそう、見る目がない。

 

それから上京して2ヶ月後くらいにその彼女から、「私の彼氏と何回寝ましたか?」とわざわざインスタにDMがきたな。「那由多」って送りたかったけど、友達に止められたから、DMは無視した。

 

そして就職を機に東京に来た。

びっくりするくらい出会いがない環境で、社会人一年目は家に引き篭もるか、やっと家を出ても友達と会って終わり。

性欲もなかったし彼氏が欲しいとも思わなかった。それくらい生きることで精一杯だった。

 

今では環境にも慣れていろんな人に会ってるけど、結局みんなばっかりが優しい人で、こんなわたしは…と自己肯定感がどんどん下がっていく。

対ヒト、として尊重して自分を下げるから、人付き合いから離れたくなるんだよ、と言われた。

確かにな、と思ったけど、確かにな、以上には思考を凝らすことがめんどくさかったし、正解を出すことでもないと思って目を瞑った。

きっとこういう類の答えのない分野に頭を使うことが苦手。

 

だからかれこれ2年近く、好きな人すらいない。

拗らせてる。

 

自分でもそれはわかるけど、どうしたらいいのか分からず、どうしたいのかも分からない。

だから食パンでも咥えながら、ちょうど曲がり角で突っ立って、運命の人ガチャでもやろうかと思ったけど、うちの家の周りにはいい角がある道路がないからこればっかりは諦めざるをえない。

 

家の近くにおいしいパン屋さんがあるから明日行ってみよ。